令和3年9月卒業式並びに学位記授与式を挙行しました









 

 学部卒業生10名、大学院博士前期修了生15名、大学院博士後期修了生1名、合計26名の皆さん、ご卒業、ご修了おめでとうございます。各地で本日のご卒業・ご修了をお喜びのご家族・ご親族の皆様にお祝いを申し上げます。
 ご卒業・ご修了は、皆様の人生において幾つかある節目の一つです。節目に当たって一つお願いがあります。保護者の方、あるいは皆さんを支援して頂いた方に感謝の言葉を伝えてください。「ありがとうございました、おかげで卒業・修了することができました。」この言葉は、頂いた経済的支援についてだけでなく、無事でいて欲しいとの祈りに対しての返礼になります。昨今の自然災害や新型コロナウイルスを見ますと、無事であることのありがたさを感じます。きちんと、口に出して伝えてください。
 卒業や修了されて、さらに進学される方もあると思いますが、多くの方は社会に出られることになると思います。今の時代は世界的に「イノベーション」が重要視されています。皆さんご自身がその中央に立つ場合もあり、またマネージメントする場合もあると思います。ここで、イノベーション人材としての3要件をお伝えします。(1)広く深い根底からの知識を持つ。これは、人類が到達している知のフロンティアがどこにありその突破を妨げているバリアが何かを、広い範囲で知っていることです。(2)問題設定能力が高い。これは、単に問題を作る以上の能力です。解いたときに大きな意味を持つような問題として問題を設定できることです。(3)異なる分野の人とコミュニケーションができる。これは、自分が考えていることの本質を他の専門の人に分からせ、またこの逆に聴いて分かる能力です。一度自己分析をしてみてください。知識・設問・対話の三つです。
 今年の9月にデジタル庁が出来ました。日本のデジタル化が遅れているとの反省からです。これは新型コロナウイルスの蔓延において顕在化したことです。これからの時代はデジタルの基礎は、あらゆる分野において必須の知識になります。そしてデジタル分野で知のフロンティアがどこにあるかを考えてみてください。
 知のフロンティアについて、もう一つあります。新型コロナウイルスについて、気が付いたことをお話しします。京都の祇園祭の由来は今からおよそ1,100年前、平安時代に京都で流行した疫病を鎮めるため、「祇園社(ぎおんしゃ)」(現在の八坂神社)にて66本の鉾をつくり疫病の退散を祈願したのが始まりです。奈良県の田原本町の津島神社でも祇園祭が行われます。疫病は過去からあったこと。現在は過去とは異なる対応をしていますが、被害は甚大です。ここでも知のフロンティアがどこにあるのか考えてみてください。
 さて、ありがとうございましたという挨拶に加えてもう一つお願いがあります。同窓会である「佐保会」と生涯付き合ってください。多くの先輩リーダーを見ることで、その生き方に影響されます。そして時がたつと、皆さんが後輩に影響を与えるようになります。その縦の繋がりを大切にすることが貴女たちの人生を豊かにすることを保証します。私は大学の将来像として、大学は青春時代のトレーニングセンターから一生涯のコミュニティセンターに移行していくと予想しています。本学ほど同窓会が充実している大学を他に知りません。是非大切にしてください。
 最後になりますが、私たち教職員は皆さんの成長と活躍が大きな喜びです。この奈良の地で学んだことを、全国に、あるいは母国に持ち帰って伝えてください。皆さんの前にある社会人生活あるいはさらなる学生生活が実り多いことを祈念してお祝いの言葉とします。

令和3年9月30日 奈良女子大学長 今岡春樹