令和6年9月卒業式並びに学位記授与式を挙行しました(9月30日(月))
学部卒業生10名、大学院博士前期課程修了生9名、大学院博士後期課程修了生5名、合計24名の皆さん、卒業、修了おめでとうございます。ご家族・ご親族をはじめ、関係者の皆様にも、お祝いを申し上げます。
皆さんの中には、卒業や修了後、さらに進学される方もいれば、社会に出られる方もいらっしゃると思います。振り返ってみますと、私の場合、大学院の修士課程を修了してから10年間くらいの間に勉強したり、活動したり、経験したことが、その後の人生において、生きるための糧を得る原動力、すなわち働く際の自分の財産になってきた様に感じています。この約10年間の中には、バブル経済真っただ中の、日本が経済的繁栄を謳歌していた時代がかなり含まれており、初期の頃は、博士課程の学生として研究活動に取り組んでいましたが、博士課程修了後は自営的な仕事を始めながら研究活動をしていたりしたものですから、一足早く就職した同世代の周りの人達と比べると、何か社会から取り残された焦りのようなものを感じたこともありました。しかしながら、自分の興味のある研究活動には、何かしらの形で継続して関わっていた、という点では、常に一貫していました。経済的余裕はありませんでしたし、社会的ステータスもありませんでしたが、兎に角、自分が興味ある事は何か、自分の望む領域で自分を高めることができる活動とは何か、を考え、究極的にはそういう活動に可能な範囲の時間とお金を費やしていました。その後、縁あって奈良女子大学に着任しましたが、以降、今日まで、本学における私の諸活動を支えてきた大きな力は、大学教員になる前の時代の諸活動にその多くが因っています。この過程で私が重要だと思ったのは、途中の道筋がわからなくとも、遠くの目標が見え、自分はそこへ向かうのだという強い意志さえ保てていれば、自ら選んだ道が遠回りであったとしても、何とかなるものだ、ということです。
また、卒業・修了される皆さんに、加えて、申し上げておきたいことは、今回の学位記の取得はゴールではなく、次のステップへのスタートラインである、ということです。そしてこれも私の個人的な経験に基づくものですが、自分の人生を大きく左右する出来事というのは、自分の意志で新しい一歩を踏み出す、そういう時に訪れるものではないだろうか、ということです。偉そうなことを申し上げていますが、私自身、いろいろな選択肢があったタイミングで、大変そうな選択肢の方へ一歩踏み出さなかったことが何回かあり、今の自分からすると、何と勿体ないことをしたのだろう、と思うことがあります。逆に、あの時、勇気をもって新しい1歩を踏み出して本当に良かった、と思うことも少なくありません。大変そうな選択肢というのは、自分にとっては未知の要素が多く、本当に新しい物事に直面することが多くなるので、躊躇する心理が働くのだろうと思います。しかし、自分の人生に有益な出来事は、自分の意志で困難な選択肢を選んだタイミングで訪れるものなのだなあ、と今では感じられるのです。100%成功に繋がるとは断言できませんが、みなさんも、もし、複数の選択肢を自分の意志で選ぶことができるのでしたら、まず、できるだけ困難で大変そうな選択肢を選び、歩まれることを考えてみてはいかがでしょうか。
さて、本日の卒業・修了式に合せて、もう一つ、お勧めしたいことがあります。皆さんの諸先輩方がつくられた同窓会である「佐保会」に加入することを、ぜひ、考えていただきたいと思います。他大学と比べると1学年の学生数が少ないので、絶対数は少ないですが、本学OGの方々は既に多方面で活躍されていらっしゃいます。社会に出た場合に、人と人とのネットワークというのは大変重要です。「佐保会」は、各県毎に支部が設置されていると伺っておりますが、これほど同窓会が充実している大学も珍しいと思います。このような人と人との繋がりを大切にすることは、プライベートでも仕事の上でも、みなさんの人生にきっと福音をもたらしてくれることと思います。
最後になりますが、本学を巣立つ皆さんの成長と活躍を目にし、耳にすることは、私たち教職員にとって大いなる励みとなります。奈良女子大学での経験を生かして、大いに奮闘、活躍していただきたいと思います。皆さんの前途が実り多いことを祈念して、お祝いの言葉とさせていただきます。
令和6年9月30日 奈良女子大学長 高田将志