平成28年度奈良女子大学大学院入学宣誓式 学長式辞

 

   博士前期課程171名、博士後期課程28名、合計199名の入学者の皆さん、奈良女子大学の大学院人間文化研究科にご入学おめでとうございます。留学生の皆さん、ようこそおいでくださいました。大学の教職員一同は、本日ご臨席の、元学長、名誉教授、同窓会である佐保会理事長、放送大学奈良学習センター所長の先生方と共に、皆さまのご入学を歓迎いたします。また、本日の皆さまのご入学をお喜びのご家族、ご親族の方々に心からお祝い申し上げます。
 式辞にあたって、まずこの記念館をご紹介します。この奈良女子大学記念館は明治41年(1908年)に着工、翌年に竣工して奈良女子高等師範学校の本館として利用されていました。昭和55年(1980年)に本部管理棟が新築されたため、平成2年(1990年)に記念館となりました。そして平成6年(1994年)に改修の後、国の重要文化財となりました。この1年間は補強工事を行いましたが、またこうして使用できるようになりました。
 さて、学士課程の4年間は「自立への過程」ですので、様々な迷い道にトラップされます。プライドとの格闘で、自分のプライドとうまく付き合う術を手に入れるまで時間がかかることがあります。博士前期課程、博士後期課程と進むにつれ、霧が晴れるように自分の進む道が見えることがあります。そのようなときは、何か成功体験があって、自信が出来た時です。 皆さんは大学院に入学されたのですから、高校までの文系と理系という分類が研究の分野では通用しないことをご存知と思います。あえて文系と理系という言葉を使いますがご理解頂けると思います。理系の学問は積み上げ方式です。それは研究対象が物質である場合、とても効果的です。世界中に同じことを研究している仲間がいます。物質は、時間と空間移動で不変です。一方、文系の学問は、個別的で説得的です。人類が持つ最高のコミュニケーションツールである言語を用い、発信します。このパワーは強烈で、一本の論文で世界を変えることができます。 生活環境系の学問は、ユニークです。理系の学問が世界共通であること、文系の学問が地域や時代で個別的でありながら、普遍性がある ことと比較して特異なイメージがあります。生活環境学は、人の生活に役立つものに興味の焦点がありますが、通常の工学とは違います。生産者よりも使用者の視点を重く見ます。学問的にはユニークですが、今の時代には面白いと注目を浴びています。このため、お茶の水女子大学と共同で大学院生活工学共同専攻を今年平成28年度に開設しました。
 ご存じの方も多いと思いますが、学部では平成26年度に改組を行いました。大学院の改組は学年進行で、学部改組後の4年後になります。唯一の例外が「臨床心理学コース」で、これも平成26年度から開設しました。しばらくは新旧の教育システムが並存します。
 
 博士後期課程にご入学の皆さん、あなた方は専門家の入り口にいます。皆さんは既に人生で幾つかの重要なチョイスをして来られたと思います。 幸福を得るチャンスは人によらず平等に訪れます。一方、チャンスは準備をした者のみに微笑むと言われます。パスツールの言葉で「チャンスは準備された心に味方するChance favors the prepared mind.」があります。研究に行き詰る。ネガティブな結果しか出ない。苦しいものです。しかし、苦闘している者にチャンスは訪れ、それを得ることができます。
 研究を続けていると、創造の喜び、発見の喜び、何物にも代えがたい歓喜が時に舞い降りるものです。皆さんの1人でも多くが、この研究の喜びを味わってくれることを願っています。

 話は変わりますが、奈良女子大学を昭和48年に卒業された稲葉カヨ先生が、第16回ロレアル-ユネスコ女性科学賞に続いて、昨年武田医学賞を受賞されました。ご寄付いただいたご浄財を元に、博士前期課程の理系修了生で博士後期課程に進学する優秀な学生に「稲葉カヨ記念教育研究奨励賞」を贈ることが決まり、既に4名の受賞者が出ました。

  最後になります。この奈良の地で、切磋琢磨され、知能・品格ともすばらしいリーダーに成長されることを祈念してお祝いの言葉といたします。

平成28年4月4日 奈良女子大学長 今岡春樹



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