平成29年9月卒業式並びに学位記授与式を挙行しました
学部卒業生5名、大学院博士前期修了生14名、大学院博士後期修了生2名合計21名の皆さん、ご卒業、ご修了おめでとうございます。本日ご同伴されましたご家族の方々、また各地で本日のご卒業・ご修了をお喜びのご親族の皆様にお祝いを申し上げます。
ご卒業・ご修了は、皆様の人生において幾つかある節目の一つです。節目に当たって一つお願いがあります。ご両親あるいは皆さんを支援して頂いた方に感謝の言葉を伝えてください。「ありがとうございました、おかげで卒業・修了することができました。」この言葉は、頂いた経済的支援についてだけでなく、無事でいて欲しいとの祈りに対しての返礼になります。昨今の自然災害を見るたびに、無事であることのありがたさを感じます。きちんと、口に出して伝えてください。
卒業されて、さらに進学される方もあると思いますが、多くの方は社会に出られることになると思います。社会に出られるときの心得を先輩としてお伝えしたいと思います。ストレスとうまく付き合う方法をマスターしてください。皆さんはずいぶん長い間学校と大学にいました。幼稚園から博士後期課程までですと25年、学部卒業の場合でも20年は学校に通っていました。学校では、皆さんは勉強の厳しさはあっても、お金を払うお客様でした。社会人になると、お金をもらう立場になります。しかも必ず同僚との共同作業をすることになります。共同作業をするのですが、一方ではライバル関係でもあります。さらに文化の違う外国の方々と仕事をする機会も増えてきています。このような複雑な状況では、様々なレベルのストレスが発生します。かすり傷程度から致命傷までありますが、初心者はどれがどれか分かりません。ほって置いて良いものとすぐに手当てをしないといけないものがありますが分かりません。自転車に乗れるようになることと似ていて、いったんマスターすると以後は忘れません。
ストレスをためない方法の初心者コースは、「お礼とお詫びは早めに」というものです。ただし、注意が必要なのはお詫びです。相手がかっとなっているときは逆効果です。
このような技法はともかく、今の時代は世界的に「イノベーション」が重要視されています。皆さんご自身がその中央に立つ場合もあり、またマネージメントする場合もあると思います。ここで、イノベーション人材としての3要件をお伝えします。(1)広く深い根底からの知識を持つ。これは、人類が到達している知のフロンティアがどこにありその突破を妨げているバリアが何かを、広い範囲で知っていることです。(2)問題設定能力が高い。これは、解いたときに大きな意味を持つような問題として問題を設定できることです。(3)異なる分野の人とコミュニケーションができる。これは、自分が考えていることの本質を他の専門の人に分からせ、またこの逆に聴いて分かる能力です。一度自己分析をしてみてください。
さて、ありがとうございましたという挨拶に加えてもう一つお願いがあります。同窓会である「佐保会」と生涯付き合ってください。多くの先輩リーダーを見ることで、その生き方に影響されます。そして時がたつと、皆さんが後輩に影響を与えるようになります。その縦の繋がりを大切にすることが貴女たちの人生を豊かにすることを保証します。童話の青い鳥のように身近に宝物があります。
最後になりますが、私たち教職員は皆さんの成長と活躍が大きな喜びです。この奈良の地で学んだことを、全国に、あるいは母国に持ち帰って伝えてください。皆さんの前にある社会人生活あるいはさらなる学生生活が実り多いことを祈念してお祝いの言葉とします。
平成29年9月29日 奈良女子大学長 今岡春樹